消費税軽減税率に関するQ&Aの改訂
消費税率の引上げと軽減税率制度の導入が近づく中、国税庁は8月1日に「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」(以下、「Q&A」)の改訂版を公表しました。
ここには、これまで説明会等で出されてきた様々な個別事例に関する質問などに対する回答が新たに盛り込まれています。
本ブログでは、今回の改訂で新たに加えられた事例とその回答につき、以前に公表された事例の復習を含め、いくつかご紹介したいと思います。
1. 従業員専用の休憩室での飲食
スーパーマーケットやコンビニエンスストアのイートインスペースで購入した飲食料品を飲食する場合は、飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる「食事の提供」にあたり、10%の税率が適用となります。
では、スーパーマーケットの従業員が従業員専用の休憩スペースにて当該スーパーマーケットで購入した飲食料品を飲食するケースはどう扱われるのでしょうか。
従業員専用のバックヤードのように顧客により飲食に用いられないことが明らかな設備は「飲食設備」には含まれないということですので、これを前提として従業員に飲食料品を販売する場合は、軽減税率が適用されることになります(Q&A問54)。
もし、当該スーパーマーケットに顧客向けの飲食設備がある場合は、持ち帰りなのか否かだけでなく、顧客向けと従業員向けのどちらの設備を利用するのか意思確認を行う必要があるということになります。
2. 遊園地の売店
テーブルや椅子などの飲食設備のある場所において飲食料品を飲食させる役務の提供には軽減税率の適用はありません。
では、例えば遊園地内の売店で販売された飲食料品は、園内に点在するベンチなどで飲食されるケースや、園内で食べ歩きをするケースなどがあります。このような場合の消費税率はどのように考えるのでしょうか。
まず、「飲食設備」とは個々のテーブルや椅子等の飲食に用いられる設備を指すもので、遊園地全体を指すものではないとされました。
そして、売店のそばに設置したテーブルや椅子など、売店の管理が及ぶものが「飲食設備」に該当し、園内に点在している売店の管理が及ばないベンチなどは、その売店にとっての「飲食設備」に該当するものではないとされました(Q&問68)。
したがって、売店の管理が及ぶとされるテーブルや椅子がある場合に、そこで飲食することを顧客が選択した場合は10%の税率となります。
また、顧客が飲食料品を園内において食べ歩くことを前提に購入した場合は、売店にとっては単に飲食料品を販売しているにすぎないことから、いわゆる外食には該当せず、軽減税率の適用対象となるとされました。
3. セット商品の一部店内飲食
「店内飲食」か「持ち帰り」かの判断は、その飲食料品の提供を行った時に意思確認をして判定することとされています。
では、ファストフード店で、例えばハンバーガーとドリンクのセットを購入した者が、ハンバーガーは持ち帰り、ドリンクは店内で飲食するという意思表示をした場合、消費税率はどのように適用されるのでしょうか。
このようなセット商品はその状態で一つの商品と考えられ、その一部のみでも店内で飲食されるのであれば、店内で飲食させるために提供した飲食料品となり、軽減税率の適用はないとされています(Q&A問60)。
このようなケースを始め、いわゆるファストフード店では軽減税率を巡る問題が様々生じるかと予測されます。大手ハンバーガーチェーンが最終的に持ち帰りと店内飲食の税込価格を合わせる方針を出したことにこの問題の困難さが窺えます。
4. キャラクターを印刷したお菓子の缶箱
食品と食品以外の資産が一体として販売されるものは、
- ① 対価が1万円以下であり、かつ、
- ② 全体のうち食品の占める割合が3分の2以上であれば、
その全体が軽減税率の適用対象となります。すなわち、例えば高価な重箱に詰めたおせち料理などは税率が10%となる可能性があります。
では、キャラクターなどが印刷された缶箱にお菓子を詰めて販売する場合、この缶箱は「一体資産」の規制を受けず、全体として飲食料品の販売と扱い、軽減税率の適用対象としてよいのでしょうか。
このような缶箱は、再利用される可能性があるものでも、原則としてはその販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものに該当し、軽減税率の適用対象となります。
ただ、その形状や販売方法等から、装飾品、小物入れ、玩具など、顧客に他の用途として再利用させることを前提として付帯しているものは、通常必要なものとして使用されるものに該当せず、その商品は「一体資産」に該当し、上述の規制を受けます(Q&A問26)。
「販売に付帯して通常必要なもの」と「再利用させることを前提として付帯しているもの」の区分は現実的には曖昧かと思われますので、引き続き議論となることが予測されます。