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個人事業を法人化するタイミング

個人事業が順調に進み、一定の所得が確保できるようになると、会社を設立して、当該事業を会社の事業として行うことを検討すべき状況になります。これを一般に「法人成り」と言います。
法人成りは、会社で事業を行うことによる信用力の向上や営業上の優位性などを期待して行う場合もありますが、節税を意識して実行する方も多いと思います。
法人成りに関して税務面で重要となるのは、そのタイミングです。以下、法人成りに伴う税務上のメリットを法人税と消費税の観点に分けてご説明し、いかにタイミングが重要かにつき明らかにしたいと思います。

(1)法人税の観点 - 所得税との税率の仕組みの違い

個人事業主が稼得した所得は事業所得として所得税および住民税が課されます。このうち所得税の税率はいわゆる累進税率になっており、所得水準が高くなるほど税率も上がっていきます(最高税率は45%。住民税を加味すると55%ほど)。

その一方で、会社の利益に課される税金は法人税および法人事業税・法人住民税などで、その税率は次のとおり所得金額とは関係なく全て一定の割合となります。

  • 法人税:23.2%(ただし中小法人については800万円以下の部分につき15%)
  • 地方法人税:法人税額の4.4%
  • 法人事業税:6.7%(ただし、中小法人については400万円以下の部分につき3.4%、800万円以下の部分につき5.1%。愛知県の標準税率を前提。)
  • 地方法人特別税:法人事業税額の43.2%
  • 法人県民税:法人税額の4.0%ないし3.2%(愛知県)
  • 法人市民税:法人税額の11.495%ないし9.215%(名古屋市)

(このうち法人事業税と地方法人特別税は支払い時に損金(経費)にできるため、これを考慮した実質的な法人の負担率を示す「実効税率」は、概ね30%と計算されます。)

このとおり、会社の利益に課される税金は、利益水準がどれだけ大きくなってもその税率は一定で、儲けるほど割高になるということはありません。

この所得税率と法人税率の仕組みの違いから言えることは、所得の少ないうちは所得税の方が負担は少ないものの、ある一定の段階を超えると法人税の負担の方が少なくなるということです。すなわち、個人事業の規模が拡大し、所得水準が法人税の負担率を超えるところまで来ると、会社を設立し、所得税から法人税に「切り替える」方が得ということになります。

では、個人事業の所得水準がどの程度になると法人化すべきか、という具体的な時期については、個々の事情に応じてシミュレーションを行い判断することになります。
ただ、住民税率も加えた所得税率が法人税の実効税率である30%のレベルに差し掛かるのは所得水準が330万円を超えてからですので、この水準を過ぎた辺りに法人成りのタイミングの基準があることが推測できます。

一般的には、所得が500万円を超えたら法人成りを検討すべき、という話しがあります。これはこの所得税と法人税の負担率のレベルが逆転する所得の水準と、会社設立および維持にかかるコストを鑑みて出されている目安であると言えます。

(2)消費税の観点 - 納税義務が生じる要件

消費税は、2期(2年)前の課税売上が1,000万円を超えると、その期(年)は原則として納税義務者となります。

もし、前年に1,000万円を超える収入があった個人事業主がその年の末に事業を廃業した上で翌年初に会社を設立し、当該事業を継続した場合、消費税の納税義務が会社に引き継がれるように思えますが、制度上そのようなことにはなりません。事業を行っている者が実質的に同じであっても、個人事業主と法人は法律上別の人格であるため、設立した会社の初年度と2期目については基準期間の課税売上はないという扱いとなり、原則として設立した会社に消費税の納税義務は生じません

すなわち、この消費税の納税義務の仕組みを考えると、収入が1,000万円を超えた翌年末までに法人成りを行えば、消費税の納税義務の開始を最大2年先送りすることができるということになります。特に急成長をしている事業主にとって、この点は法人成りのタイミングを決める大きな要素になり得るものです。

法人成りのタイミングは税務の観点だけで決められるものではありませんが、このとおり、数年の違いでも資金繰りに大きな影響を与える要素になり得るものです。事業の法人化をお考えの個人事業主の方は、この課税の仕組みについても心に留めておいていただければと思います。