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適切な役員報酬の水準を考える

起業後、一定の会社収益を確保する目途が立ち、役員である自身に報酬を支払うこととなった場合に、どの程度の金額にするべきか迷うことがあるかと思います。
住宅や車の購入など、個人的支出のための資金が必要である場合などは特に、「利益分を全て報酬に」と考えるかもしれませんが、会社の事業資金が不足するうえ、何より、税金(個人所得税)や社会保険料の払い出しが増え、全体として支出が増加する可能性が高くなります。

役員個人または会社に多額の資金が必要となる理由が特にない限り、経営者としては、「個人法人全体として税金等の払い出しが少なくなるように」と考えることが通常かと思います。
以下、法人に2,000万円の利益(役員報酬考慮前)が見込まれるケースを想定し、①全額役員報酬として受け取った場合、および②法人に大部分の利益を留保した場合に、それぞれ年間かかってくる税金等を具体的数値とともに示したいと思います(なお、税率、料額表は平成28年1月1日現在適用されているものによります)。

①2,000万円の利益を全て月々の役員報酬とした場合

<個人(名古屋市在住、配偶者を扶養している)>

所得税(復興税を含む) 358万円
住民税 150万円
健康保険料・介護保険料 84万円
厚生年金保険料 66万円
658万円

<法人(資本金1,000万円、名古屋市所在)>

法人税 なし
市県民税(均等割) 7万円
健康保険料・介護保険料
(会社負担分)
84万円
厚生年金保険料
(会社負担分)
66万円
157万円
個人法人合計 815万円 (負担率 40.76%)

②役員報酬を月10万ずつ支給し、残り(1,880万円)は会社に留保する場合

<個人>

所得税(復興税を含む) なし
住民税 なし
健康保険料・介護保険料 7万円
厚生年金保険料 10万円
17万円

<法人>

法人税 338万円(事業税が翌期に損金になることを考慮)
市県民税 49万円
事業税(地方法人特別税を含む) 136万円
健康保険料・介護保険料
(会社負担分)
7万円
厚生年金保険料
(会社負担分)
10万円
540万円
個人法人合計 557万円 (負担率 27.87%)

この両者のケースで負担率にこれほどの差が生じる理由は、主に法人税と所得税の税率の違いに基づきます。法人税・市県民税が合わせて約27%(800万円以下の部分は約19%)の定率のうえ、事業税が損金扱いできるのに対し、所得税は住民税と合わせて約15%から約55%の段階税率になっており、役員報酬とする金額が多くなるほど、税負担も大きくなります。
また、社会保険料の負担が法人個人双方にとって無視できないほど大きいものであることも見て取れると思います。

では、このケースにおいて最も個人法人全体としての税金等の負担率が低くなる(支出が最少になる)役員報酬の水準は? というと、詳細な計算は省きますが、10万円刻みで月次役員給与を動かしていく場合、次の水準と算出されます。

役員報酬を月30万ずつ支給し、残り(1,640万円)は会社に留保する場合

<個人>

所得税(復興税を含む) 5万円
住民税 12万円
健康保険料・介護保険料 21万円
厚生年金保険料 32万円
70万円

<法人>

法人税 279万円
市県民税 41万円
事業税(地方法人特別税を含む) 112万円
健康保険料・介護保険料(会社負担分) 21万円
厚生年金保険料(会社負担分) 32万円
485万円
合計 555万円(負担率27.74%)

これはあくまで個人、法人を合わせた負担が最も少なくなるという観点で出している結論に過ぎませんので、実際に役員が生活するうえで個人の可処分所得が足りなくなる場合は役員報酬額をこれ以上の金額とすることになるでしょう(ただこの場合も、月次役員給与が80万円を超えるまでは、合計負担率が計算上28%台で緩やかに推移するため、この水準までは大きな負担増を生まずに報酬額を上げていくことができます)。

言えることは、役員報酬が法人にとって損金になるからといって無闇にその金額を上げても、結果として節税にはならないので、法人および個人の税金等の負担を合わせて考慮し、バランスの良いところで適切な報酬金額を決めることが肝要となるということです。

また、上の計算例はあくまで上に示した前提に基づくものであって、全てのケースに当てはまる訳ではありません。税率や料額、利益水準や資本金額、役員や扶養家族の数などに応じて適切な報酬水準が異なってくることをご了解ください。

なお、役員給与(役員報酬)を法人税上損金とするためには、定期同額であること、事前に確定額を管轄税務署に届け出ること等が要件となりますので留意する必要があります。詳しくは 役員給与を損金とするための要件 をご参照ください。